October 2018
AFSウィークエンド
教会でのスピーチに加え、僕の英語力上達に最も役立ったのが「AFSウィークエンド」だ。 渡米後3ヶ月ぐらいして、ホストファミリーにも学校にも慣れた頃を見計らい、今度は州内の他の高校を訪問して文化交流活動をすることが義務づけられる。 州内の他のAFS留学生と一緒に、自分が通う高校とは別の学校に皆で訪問し、自国の文化のアピールと訪問先のホストファミリーとの親睦を図るのがミッションだ。タフガイとセクシーガ [...]
スピーチ
僕の留学先は、オハイオ州のシンシナティから30マイルほど離れたところにある田舎町だった。 この留学制度は文化交流を目的としているため、意図的に留学生をアメリカ人しかいない小さな町に滞在させる。もちろん日本人などどこにもおらず、皆はじろじろと珍しそうに僕を眺めた。 留学費用はコミュニティの募金で賄うため、留学生はコミュニティに貢献する義務 がある。その代表的な活動がスピーチで [...]
オーディション
フットボール選手と肩を並べるほど人気者だったのが、マークという男子学生だった。長身+ブロンド+ブルーの目という、アメリカ人の古典的理想を具現化したような彼は、演劇部のヒーローだった。優越感に凝り固まったような彼の言動は非常にクサかったが、クサいなどという微妙な感覚は、見た目を最優先する高校生にとってはどうでも良かった。 学園祭が近づくと、演劇部主催のオーディションが開催される。脇役の演技者を、生徒 [...]
異次元の価値観
前にも述べたように、勉強する気など全くない生徒が大半を占める高校であったため、頭がいいとか勉強ができる、などというのはほとんど価値を持たない。見た目がすべてだった。 男子生徒ならばタフかハンサム、女子生徒ならば誰もが認める挑発的な肉感美人というのがこの高校での絶対的価値で、それ以外はクズ扱いされる。僕のホストブラザーがイジケて、引きこもりまがいの性格になってしまったのもよくわかる。 当時は日本人な [...]
学校の人気者
外交的なアメリカ社会では、校内での人気度がその人物の重要な評価パラメータになる。 従って目立つことが非常に重要で、タフさを強調するか、キザに徹するか、大きな声を出すか、不可思議な言動をするか、先生を馬鹿にするか、など、さまざまな戦略が渦巻いている。 通常、人気の頂点に位置するのはアメリカの国民的スポーツであるフットボールの選手で、ホームカミングと呼ばれる地元の試合では、コミュニティも含めた町全体の [...]
ホストブラザー
僕のホストブラザーは、こういったパーティーには無縁だった。学校でも「変人」の部類に属する彼は、少数のテッキーたちとしか付き合わず、いわゆる「ハイテク・オタク」だった。 曇った牛乳ビンのような厚い眼鏡をかけた彼の風貌は、若い頃のビルゲイツに似た雰囲気だったが、お腹が大きく出っ張っている点が違っていた。肥満とも言えるそのメタボリックな体型は、ク ールエイドと巨大なハンバーガ [...]
パーティーの会話
アメリカ社会では、授業でも、会議でも、黙っていることは無能の証拠とみなされる。パーティーでも声をかけるのが当たり前、黙って立っているだけでは、一晩中何も起こらない。 パーティーでの会話ほど単純なものはない。だいたい3つぐらいフレーズを知っていれば事足りる: (1) Hey man, what’s up, man…. (2) Not much, man… / Do you like this stu [...]
高校生のパーティー
毎晩、誰かの家でパーティーが行われていた。 留学生には運転が許されていないので、僕は車で迎えに来てくれる悪友に誘われるまま、多くのパーティーに参加した。高校生たちが大勢集まってビールを飲みながらひたすらお喋りをする会で、週末の上品な家族ぐるみのホームパーティーとは、全く雰囲気が異なる。 親が旅行中などで留守にしている間を見計らって開催されるケースが多く、どこかでやっていると聞きつける [...]
得意科目と苦手科目
当初はビクビク・ドキドキの連続だった僕も、日本人の得意科目である数学のおかげで不良生徒にも一目置かれるようになり、市民権を得たような気分になった。 数学は圧倒的に日本が進んでいた。アメリカの高校では Linear Algebra(線形代数)の基本に触れるのみで、行列演算や配列、微分積分などは大学でしか学ばない。もともと何の役に立つかわからない科目だけに、大半の生徒は学ぶ意志を完全に放棄しており、理 [...]
少女たち
中学と一緒になっていた学校だったことが幸運だった。僕は13歳近辺の女の子に妙に人気があった。 日本から来たとかいう、謎めいた雰囲気で年齢不詳の痩せた男の子は、体型的にも彼女達と釣り合いがとれた。 ホストファミリーとスケートに行ったとき、セクシーな女の子2人が親しげに話しかけてきた。笑うと歯の矯正用金具(*)がむき出しになり、好奇心いっぱいの無邪気な姿とセクシーな風貌がひどく [...]
地元の高校
毎週末のホームパーティーに集まる裕福で品行方正なご夫婦たちと対照的だったのが、僕が通った地元の高校だった。 高校まで義務教育のアメリカでは、大半の生徒は勉強する気など全くない。中学と高校が一緒になっていたその学校では、13歳のまだ可愛らしさが残る少年少女たちから18歳の全身からフェロモンが溢れ出ているような不良生徒たちまでが混ざり合い、様々な人生劇を繰り広げて [...]
高校初日
新学期初日の登校ほど緊張するものはない。 スクールバスの中で物珍しそうに僕を眺める無数の視線に耐え、女の子の派手な化粧や刺激的な服装に圧倒されながら、僕はホストブラザーに先導されて American Government(アメリカ政治)が専門の担任の先生に面会した。 彼は眉の濃い肥った陽気な先生で、僕の緊張は一気に吹き飛んだが、朝礼のアナウンスがスピーカーから流れて来た時には一瞬何が起こったか理解 [...]