教会でのスピーチに加え、僕の英語力上達に最も役立ったのが「AFSウィークエンド」だ。

渡米後3ヶ月ぐらいして、ホストファミリーにも学校にも慣れた頃を見計らい、今度は州内の他の高校を訪問して文化交流活動をすることが義務づけられる。

州内の他のAFS留学生と一緒に、自分が通う高校とは別の学校に皆で訪問し、自国の文化のアピールと訪問先のホストファミリーとの親睦を図るのがミッションだ。タフガイとセクシーガールが牛耳っている地元高校の日常から解放されるので、僕はこのイベントが大好きだった。

僕の場合はオハイオ州だったから、クリーブランド、コロンブス、デイトンなど、州内のいろいろなところに行った。クリーブランドで出会ったデビーとは、今でも親交がある。40年以上前の出来事だ。

毎月1回程度の頻度で、AFS留学生たちが同じ州内の別の高校に金曜日の朝から集結し、そこでいろいろな授業に参加してスピーチを行う。生徒からは様々な質問が飛び交い、それに対してどう対処するかで留学生の個性が出る。

トルコからの留学生は意味不明な問答で場の笑いを誘い、ブラジルからの留学生はアメリカの高校生を子供扱いし、タイからの女子留学生は常に可愛い感じを貫いた。周りのウケを狙う不良生徒たちの質問をどうかわして自分をアピールするか・・・ 僕たちはその攻防に必死だった。

昼間のスピーチ地獄からやっと解放されると、その晩に泊めてくれる現地ホストファミリーとの親睦の時間となる。昼間と変わらずの質疑応答で圧倒されながらも、夕食のテーブルを囲んだ家族ぐるみの会話は、上品なホストファミリーの異文化に対するリスペクトを感じるひとときだった。

夕食が済むと、現地高校の体育館で開かれるダンスパーティーに参加することになる。ライブバンドの演奏のもと、現地の高校生が金曜日の夜を満喫するエキサイティングなイベントだ。

一応自由参加だが、その高校の全員が参加しているのではないかと思われるほどの混雑だ。ときおりスローな曲が演奏されると、男女が身体をぴったりとくっつけてダンスを始める。それまで一緒に踊っていた向かいの女の子にスローダンスを申し込むと、たいていはOKが出る。こうして会場の雰囲気は絶好調となり、夜が更けていく。

土曜日は、現地ホストファミリーも交えて近くの公園でピクニックなど、様々なイベントがある。

日曜日になると、盛り上がった週末の思い出を惜しみながら皆に別れを告げ、また地元のホストファミリーの元へと帰っていく。翌日からは地元高校での日常が待っているが、僕はAFSウィークエンドを体験するたび、自分がちょっぴり成長した気がした。