マウイ島での3週間は最高だった。午前中はスキューバダイビング、午後はウィンドサーフィンに明け暮れた。

ダイビングは、早朝からのレッスンを毎日2回こなす必要があり、それだけでもかなり体力を消耗した。夜は教科書(もちろん英語!)を読み、筆記試験に備える必要もあった。ダイビングのインストラクターはもとウィンドサーファーで、より「頭を使う」からという理由でダイビングに転向したそうだ。

3~4人のメンバーから成るクラスは非常に楽しく効率的で、費用も 200ドル程度と格安だった。途中で1日の休みをはさみ、合計5日で PADI Open Water Diver のライセンスが取得できた。この年の秋には、ボストンで上級ライセンス(Advanced Open Water Diver)も取得したが、その時の寒さや環境と比較すると、このマウイ島のクラスは、まさに天国だった。

風が安定する午後はウィンドサーフィンに注力し、上級者への第一関門であるウォータースタートの習得に励んだ。雑誌の記事を読みあさり、手足や上体の使い方は頭では分かっていたが、刻々と変化する波や風に瞬時に反応するには身体に叩き込む必要がある。

強風に飛ばされながら、日が暮れるまで、ひたすら練習を繰り返した。手のマメが潰れ始める3日目になって、僕は何とかコツを掴んだ。それ以降は沈するたびに成功率が上がっていった。

マウイ島での出来事は、マウイ・ファンボーダーに登録すればお読みいただくことができる。波間を自由自在に滑り抜けるショートボードの魅力と、マウイ島の美しい風景描写を、新聞のコラム小説ぐらいの長さに区切って、毎日メールでお届けしている。

是非お楽しみあれ!

ウォータースタートをマスターした僕は、やっと足の着かない沖合いまで出られるようになった。次の難関は、強風の中でも安定してターンができる「カービング・ジャイブ」だが、失敗して沈してもウォータースタートで起き上がり、岸まで戻ってくることができる。

ジャイブは、少なくとも千回は練習する必要があるそうだ。それをマスターするまでは、ビーチスタートで沖合いまで出てジャイブに失敗し、ウォータースタートで起き上がって風下の岸まで戻り、そこからボードとセールを引きずって風上まで移動し再びビーチスタート・・・という「魔のトライアングル」を延々と続けることになる。

残りの2週間で、何とかジャイブを数回成功させることはできたが、安定してターンするにはまだ練習が足りない。来年の課題だ。そろそろ東海岸に向けて発ち、アパートの入居と新学期の準備をする必要がある。

カフルイ空港を離陸した飛行機がカナハビーチの上空で大きく旋回した時、僕は眼下のウィンドサーファーたちを眺めながらマウイ滞在の回想にふけっていた。初めての長期滞在を経て、僕はなぜかマウイ島の住民になった気がしていた。これから先、何度も、何度も、この島を訪れることになる予感がした。

僕は新たな冒険への期待に胸を膨らませながら、機内で配られたフルーツジュースを飲み干した。