毎晩、誰かの家でパーティーが行われていた。

留学生には運転が許されていないので、僕は車で迎えに来てくれる悪友に誘われるまま、多くのパーティーに参加した。高校生たちが大勢集まってビールを飲みながらひたすらお喋りをする会で、週末の上品な家族ぐるみのホームパーティーとは、全く雰囲気が異なる。

親が旅行中などで留守にしている間を見計らって開催されるケースが多く、どこかでやっていると聞きつけると、誰でも自由に参加できる。パーティーからパーティーを渡り歩く party hopper と呼ばれる連中もいる。

日本だと全員で自己紹介をしたりゲームをやったりして場を取り持とうとするが、そんなことは絶対に無い。開催者は場所と大量のビールを提供するだけで、あとは完全に無法状態。誰も場を仕切らず、いつ行ってもいつ帰っても構わない。集まってくる者も、これは誰それのパーティーだよ〜ぐらいしか知らず、開催者に会ってお礼を言うなんてこともない。

到着したらまずビールを片手に、大騒ぎする適当なグループを見つけひとりに声をかける。恥ずかしさもあり最初は戸惑ったが、すぐに慣れた。本物の日本人など見たこともない田舎のアメリカ高校生にとっては、不思議な風貌の僕はさぞかし奇怪に映ったことだろうが、そんなことは気にとめる様子もなく対等に接してくれる。

人種的偏見を持っている連中も中にはいた。初対面なのに妙に親しげに近づいてきて、いろいろ質問しながら、いきなり皆の前でド〜ンと落としてジョークのネタにする。まあ、あまり気にしないことだ。言葉が不自由なのはこういう時に助かる。

女の子に対しても気後れする必要はない。気軽に声をかければ、通常はビッグ・スマイルで楽しく会話してくれる。

どんなにとびっきりの美人であっても、日本の女の子のように能面づらで無視するなどという失礼な行為は絶対に無い。話したくない時はそれとなく会話を逸らすなど、社交礼儀をわきまえているのが立派だ。小さい時から社会人として扱われて育てられてきた証拠だろう。