そんな大学生活を半年ほど続けながら、得るものは何もないと感じていた僕は、国際学部の留学制度に応募した。

この大学では、米国五大湖周辺の5つの大学と提携関係にあって、互いに留学生を受け入れ合ったり単位の交換ができるような制度があった。アメリカの学生を毎年数名受け入れる代わりに、日本からも若干名、これらの大学に送り込む。

試験が大好きな僕は、さっそくこれに応募して、パスした。

日本で4年間、退屈な大学生活を送るかわりに、そのうちの1年をアメリカで過ごすことができるというわけだ。アメリカで取得した単位を日本の大学に変換すれば、全く留年しなくて済む。

授業料と渡航費は国際学部で負担してくれるので、僕の負担は生活費だけということになる。物価の高い東京で過ごすよりも遥かに安上がりで、全寮制で密度の高い効率的な大学生活をエンジョイできる!

この制度による留学先は、GLCA(Great Lakes Colleges Association)に属する大学を中心に、確か5つぐらいから選べるようになっていた。図書館で各大学の評判を調べたところ、Earhlam CollegeKalamazoo CollegeCarleton College などが上位にランクインしており、いずれも学生数が1,000人から2,000人程度の小さな大学だった。

悩んだ末、僕は Kalamazoo College を選んだ。ミシガン州にある、学生数1,300人ぐらいの小さなカレッジだった。授業料が高いので、比較的裕福な家庭に育った優秀な学生が多いとの評判だった。

どうせ行くなら、ハーバードやスタンフォード、せめてアイビーリーグのどれかに・・・ などとも考えたが、国際部の提携先には入っていない。自費で行くには学費が高すぎるし、頑張って奨学金に応募してみたところで合格する保証はない。

小さい大学でもレベルが高ければ育ちのいい学生が多いはずで、マンモス大学の無味乾燥とした理工学部の現状と比べれば、家族的な雰囲気も悪くはない。

僕は期待に胸を膨らませた。