前にも述べたように、勉強する気など全くない生徒が大半を占める高校であったため、頭がいいとか勉強ができる、などというのはほとんど価値を持たない。見た目がすべてだった。

男子生徒ならばタフかハンサム、女子生徒ならば誰もが認める挑発的な肉感美人というのがこの高校での絶対的価値で、それ以外はクズ扱いされる。僕のホストブラザーがイジケて、引きこもりまがいの性格になってしまったのもよくわかる。

当時は日本人など殆ど見かけなかったが、仮に日本の平均的(=痩せすぎた)女の子がこんな環境に放り込まれたとしたら、まるでガイコツが歩いているように見えたに違いない。男女問わず、身体のボリューム感はそれくらい大きな違いがあった。

こんな中でしばらく生活していると、圧倒的な体格差や価値観の違いから、まるで恐竜時代かローマの円形競技場にタイムスリップしたような錯覚に陥る。見るもの・触れるもののサイズ感が、とにかく異次元なのだ。

ただし恐竜時代でも小さな生物が何とか生き延びたように、そんな環境にも慣れるものだ。しばらくすると、それほど体格の違いを意識しなくなり、彼らと同じレベルで物事を考えるようになる。

後に1年ぶりに日本に戻ってきたときは、周りの日本人がまるで小人のように見え、まるで昭和初期のレトリックな記録映像みたいだった。大学に進学した同級生たちに再会しても妙に分別くさくて、何かに誘ってもイェスノーをはっきりと言わない反応が気持ち悪くて仕方がなかった。