僕のホストブラザーは、こういったパーティーには無縁だった。学校でも「変人」の部類に属する彼は、少数のテッキーたちとしか付き合わず、いわゆる「ハイテク・オタク」だった。

曇った牛乳ビンのような厚い眼鏡をかけた彼の風貌は、若い頃のビルゲイツに似た雰囲気だったが、お腹が大きく出っ張っている点が違っていた。肥満とも言えるそのメタボリックな体型は、ク ールエイドと巨大なハンバーガー中心の食生活のせいに違いない。夕食に出てくる野菜を全部残す徹底ぶりには、感心させられた。

理数系の科目には長けていたが弟にはかなわないせいだろうか、どこかにコンプレックスを持っており、天才的な技術者というわけではなかった。

一方、彼の弟は超優秀で、他の高校生たちを完全に馬鹿にしていた。僕は毎日チェスを付き合わされたが、勝ったのは一度だけだった。アメリカでは大学でしか教え ない微分積分を既にマスターしていたようだ。

彼はその後、全米ナンバーワンのエリート工科大学 Caltech (California Institute of Technology: カリフォルニア工科大学)に進んだ。Caltech は知名度ではなぜか MIT に及ばないが、優秀な教授陣と少数精鋭のエリート学生が集まり、「キャンパスに足を踏み入れると脳みそが動く音がする」とまで言われる。