僕の愛車フィアットは、時々オーバーヒートはしたがなんとか健在だった。

座席は一応4つあるが、スポーツカーなので後部座席は飾りみたいなものだ。ヨーロッパ車なので車体も小さい。トランクに荷物を詰め込み過ぎると、せっかく網で修理した底がぬけるかもしれない。

僕は後部座席にテントのセットと寝袋を押し込み、助手席にカトリーヌを載せて、数々の思い出を懐かしみながらミシガンの大学キャンパスをあとにした。

通常、アメリカ大陸横断は10日前後の日程で組む。僕たちはそれを5日でこなそうとした。途中、イエローストーンにも寄ってみたい。見渡す限りの畑以外何もない中西部は寄り道をせず、フリーウェイをひたすら突っ走ることにして、彼女と交代で運転した。

ガソリンが空になるまでひとりが運転し、もうひとりは助手席で仮眠、ガソリンスタンドで役割を交代するという連続運転方式だ。

サボテンだらけの砂漠のような地域では、エンジンが頻繁にオーバーヒートした。誰一人通らない田舎道の路肩に車を止め、水を補給してエンジンが冷えるのを待つのは結構心細かった。

ワイオミング州に入るとキャンプ場を探し、テントを張って寝袋で眠った。大自然の中での宿泊は、高級ホテルにも勝る別種の快適さがあった。