春学期はあっという間に過ぎた。6月上旬には期末試験が終わり、いよいよ長い夏休みだ。僕は9月までに日本の大学に戻れば良かった。

時間はたっぷりある。いろいろなことにチャレンジし続けた1年の総仕上げとして、僕はアメリカ大陸横断旅行を計画した。

大学のあるミシガン州からイリノイ州のシカゴを通過し、少し南のルートをとりながら広大な中西部を西へ西へ、コロラド州やワイオミング州を経てイエローストーン、そしてシアトルの友人宅に2~3泊し、今度は西海岸のルート1を海岸沿いにひたすら南へ。

サンフランシスコにしばらく滞在してから、さらにロサンゼルスまで南下し、そして少し内側に入ってアリゾナ州のグランドキャニオンを最終目標にした。あとはサンフランシスコまで戻って日本への飛行機に乗るだけだ。

2ヶ月以上の長旅になるので、ホテルなんかに泊まる経済的余裕はない。メキシコ登山ツアーの経験が僕を大胆にし、全行程を車泊と野宿でまかなうことにした。同じ大学の留学生数名も旅行を計画していたので、日程を決めて行く先々で落ち合うことにした。

カトリーヌというフランスからの留学生も、シアトルに到着するまで車に同乗したいと言ってきた。

Suchan, I’m also planning to visit our friend in Seattle.  Would it be possible for you to drive me there?

You mean… from here?

Yeah, if it’s OK with you.

先輩に「お前には女難の相がある」と言われたことが再び思い出されて一瞬躊躇したが、学生時代最後の大冒険だ、女だろうが魔物だろうが何でも来いと、僕は彼女の依頼を受け入れた。