カラマズー大学での1年間の交換留学を勝ち取った僕は、夢と希望に満ち溢れていた。

前回の留学では、受け入れてくれたコミュニティやホストファミリーにお世話になっているということで、様々な場面で遠慮があった。でも今回は完全に自由だ。自分で生活費(実際は父が支援してくれた)も支払い、足りない分はキャンパスでのアルバイトで賄うつもりだ。誰とどう付き合おうと、誰にも文句を言われない。

日本の狭いアパートを引き払い、7月末に渡米した。新学期は9月上旬からなので、8月いっぱいはアメリカを旅行できる。まずは高校時代にお世話になったオハイオ州のホストファミリーや友人たちを訪れ、それからマサチューセッツ州まで足を伸ばし、その後、カラマズー大学のあるミシガン州に行くことにした。

二年ぶりに会ったホストファミリーは、意外に早く再会できたことをとても喜んでくれた。ホストブラザーは隣のイリノイ州の工科大学に進学しており、弟のピーターは工学系では全米ナンバーワンのカリフォルニア工科大学(Caltech: Calfornia Institute of Technology)に応募する予定だという。妹のジェリーは以前よりも社交的になり、高校生活最後の夏休みを満喫している様子だった。

AFS留学時代の級友たちの多くは、地元で就職していた。電気技師となった友人のひとりは、職場のドイツ系アメリカ人を僕に紹介したいと言う。凄いやつだから、一緒に遊びに行こうと誘われた。

彼の家を訪ね、「実験室」とかいう地下室の部屋に案内された僕たちは、その悪趣味な内装に度肝を抜かれた。地下室特有のカビ臭い匂いが漂うその部屋は、ミラーボールとブラックライトで装飾され、真ん中には発電所の部品でも盗んできたかのような巨大なコイルが鎮座している。

彼は僕たちにデモンストレーションを見せたいと言う。部屋のライトを消してコイルのスイッチを入れた瞬間、バチバチという大音響と共に部屋いっぱいに稲妻が飛び交った。僕たちはあやうく逃げ出すところだった。