僕にとって最高の思い出が、他国の留学生たちと1ヶ月間行動を共にしながら各州の高校を訪ね歩くバス・トリップだ。

前に述べた「AFSウィークエンド」の長期豪華版で、バスという団体行動に便利な移動手段があり、卒業後のたっぷりとした時間を使えるのがいい。しかも様々な国から来た留学生たちと1ヶ月も行動を共にするのだ。

文化交流を目的としたこの巡業旅行では、昼間はバス移動とピクニック、到着先の高校で自国文化についてスピーチを行い、夜には決まって体育館でダンスパーティーが開催された。地元の高校生と親交を深め、その晩はボランティアの家庭のお世話になる。

この時ほど、人種や文化の違いを肌で感じたことはなかった。留学生はいずれも超社交的で強烈な個性を持っており、トルコ、マレーシア、タイ、フランス、ドイツからなど、僕のグループには12~3人ぐらいいただろうか。

もちろん日本人は僕ひとりだ。ブラジルからの留学生男女は、さすがにワイルドだった。

“Hey, I fxxxed my sister…” ある朝、出発前のバスに集合すると、タイから来たワルの留学生がニヤニヤしながら僕に耳打ちした。Sister と言っても、実の姉妹ではない。バストリップ訪問先の高校に通うホスト・シスターのことで、宿を提供してくれるボランティア家族の娘さんだ。

“I was late last night, you know. When I got home, there she was, waiting for me… And guess what… Oh man ! She was so wild !”(ほら、昨夜遅かったろう? 家に入ったら、彼女がまだ起きていて、俺のこと待っていたんだ・・・ で、どうなったと思う? ワイルドだったぜ~!)

バス・トリップは、この留学制度の総仕上げとなる貴重な体験だ。

アメリカの高校生に混じって1年近く生活した後なので、英語はネイティブに近いレベルにまで上達しており、人種や母国語が違っていてもコミュニケーションには全く問題がない。

話せば話すほど、異なる文化の裏に潜む深い洞察を得ることができ、強い絆が生まれる。 1ヶ月も行動を共にすると、メンバーの間には様々な人間関係が入り乱れてくる。

僕はオーストラリアの女の子と恋に落ちた。