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レストランに着いたのは絶妙なタイミングだった。空はまだ青かったが、日はすっかり傾き、水平線の少し上から橙色の光を放っている。しばらくすると波打つ海面には金色の波紋が広がり、すぐ上の空を真っ赤に染め始める。頭上を覆う水槽に端から絵の具を垂らしたように、真紅が朱色に変わり、深い紫に変化しながら、天空のもう一方の藍色に混ざり合う。やがて濃紺に変化した空は、一番星の輝きを引き立てるかのように深い闇に沈んでいく・・・ 【マウイの夕焼け】より   前方のくずれかかった波のリップに目標を定めると、パンピングして加速しながらボードのテールをその壁に押し当て、高いジャンプを決める。透き通った青空を背景に上体をねじり、ボードを頭上高く蹴り上げた体制のまま、セールを鳥の翼のように構えて空中遊泳を楽しむ。クロッシング・アップと呼ばれる大技だ。一瞬、時間が止まったようにも見える。テールから着水する彼の姿は巨大な波の向こう側に隠れ、垂直に支えられたマストの方向から、ジャンプが成功したことがわかる・・・ 【フキーパ】より
 
エキサイティングなマリンスポーツと美しいマウイ島の描写を背景に
筆者の憧れと興奮、そして苦渋と挫折のスリリングな体験を私小説化

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呆気に取られながらしばらく沖を観察していた僕は、ふとビーチに目をやった。これは何だ?見たことも無い人種がビーチに続々と集まって来ている・・・
真っ黒に日焼けした肌に白い歯、引き締まった顎、筋肉で盛り上がった肩、静かに遠くを見つめる澄んだ目・・・ 彼らが小脇に抱えているのは、サーフボードのような短い板。エアブラシをふんだんに使ったカラフルなデザインも僕の目を引いた。【ビーチに集まるファンボーダーたち】より
  いつしか僕は、真っ黒な波のうねりの間にいた。数メートルもあるような大きな波の山と谷間で、僕の身体とボードは見え隠れを繰り返した。海上は見渡す限り黒一色、強風で水しぶきをあげる波の頂上だけが白く浮き出しているように見えた。 なす術を使い果たし急に不安になった僕はボードの上で中腰になり、あたりかまわず大声で叫び助けを求めたが、その声はただ風の音にかき消されるだけだった。気化熱で体温を奪われた僕の身体には、やがてぶるぶると震えが走り始めた・・・ 【真っ黒な海】より
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