オリエンテーションの最終日に、僕のホストファミリーは西海岸まで自家用飛行機で迎えにきてくれた。
お父さんが妻と3人の子供たち全員を、自分の飛行機で中西部のオハイオ州からカリフォルニアまで連れてきてしまうとは、何とスケールの大きい国なんだろう!

初めて面会するホストファミリーは5人家族。優しそうで理知的なお父さん、僕の英語力を意識してかはっきりとした口調でゆっくり話してくれるお母さん、分厚い眼鏡をかけたホストブラザー、そして利口そうな弟とシャイな赤毛の妹さん・・・ 僕のアメリカン・ファミリーだ!

“This is Pfeiffer Samuel Edward, Zero Six Two One Seven,… waiting for runaway clearance… stand by…”

サングラスをかけたホストファザーが操縦席に座り、歯切れの良い声で管制塔と通信している。間もなく離陸だ。お父さんが操縦する6人乗りのプロペラ機は、奥様と3人の子供に僕を加えると、ちょうど座席がいっぱいになる。家族全員揃って、大空を自由に旅するという贅沢な冒険に僕は胸が張り裂けそうだったが、子供たちは当たり前の顔をしていた。

ロッキー山脈越えは、緊張の連続だった。雲の中を通過するとジャンボジェットでも揺れを感じるのは皆さんご存知だろう。これが6人乗りとなると、山間部の上昇気流や乱気流によって、風に揉まれた蝶のようにヒラヒラ・フラフラといった感じになる。

スト〜ンと機体が落ちると、奥様が「オ〜、ジョージ!」(Oh, George!)とため息をつきながら注意をうながす。子供達は慣れっこだ。僕は顔がだんだんと青ざめていく・・・ やがて、気分が悪くなり嘔吐を繰り返すようになった僕を見かねて、近くの空港に連絡して着陸許可をもらい、ホテルで一泊の休憩をとることになった。